1.AI投資の加速と株価
2026年に入ってから、年初時点では想定されていなかった出来事が二つ発生しました。一つは、イラン紛争、二つ目はAI投資の加速です。日本の株価は、イラン紛争の開始とともに3月に下がったものの、4月の米国・イランの停戦合意以降は、AI・半導体関連銘柄がけん引役となり大きく上昇しました。実際、東京証券取引所に上場する日本企業全体の株価の動きを総合的に表すTOPIXより、半導体銘柄のウェイトが大きい日経平均株価の上昇幅の方が大きくなっています(図表1)。こうした背景には、米国の旺盛なAI投資があるため、その状況についてみていきたいと思います。
2.米国のAI投資
スタンフォード大学が4月に公表した「AIインデックスレポート」から、各国のAI投資額をみると、2013年~2025年の累計で米国は750億ドルになっています(図表2)。2位の中国が約130億ドルと米国の6分の1程度であり、中国の経済規模が米国の3分の2程度であることを踏まえても、米国の投資額が圧倒的に大きいことが分かります。また、米国の2025年単年のAI投資額は285億ドルと、2013~2025年累計の約3分の1が投資されており、最近になって投資が急速に拡大しています。なお、このAI投資額はAI企業に対する外部の民間投資家が投資した資金で、企業によるデータセンターなどへの設備投資は含まれていません。
そのため、2025年時点の各国のデータセンター数をみると、米国が約5,500ヵ所と2位のドイツの500か所程度の11倍もの数があります(図表3)。また、米国のハイパースケーラーと呼ばれる、アマゾン、グーグル、メタ、マイクロソフト、オラクルの合計5社の設備投資額は2025年に前年比+69%で増加した後、2026年は同+83%と更に伸びが加速する見通しとなっています(図表4)。
こうしたデータセンター含むAI需要の拡大を背景に、米国は各国からAI関連財の輸入を大きく増やしています。米国のAI関連財以外の輸入は、昨年4月の関税引き上げ前に駆け込み需要で急増した後、ほぼ横ばいで推移していました(図表5)。一方、AI関連財は昨年後半以降、需要増に伴うインフレも相俟って増加基調で推移しています。米国が世界からAI関連財を積極的に調達しているため、台湾や韓国では半導体の米国への輸出、日本では半導体製造装置の台湾や米国などへの輸出が好調となっており、こうしたことが昨今のAI・半導体相場の背景にあります。
足元の米国経済もAI投資がけん引しています。これまで、米国経済はGDPの約70%を占める個人消費が成長を引っ張ってきましたが、直近1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.1%で、そのうち個人消費の寄与は同+0.4%ptの一方、設備投資は同+1.6%ptと大きくなっています(図表6)。個人消費もAI・半導体相場の株高による資産効果で押し上げられていることを踏まえると、現在の米国経済の成長の大半がAI投資に起因するものと言えそうです。
3.電力需要の増加への対応
AIのモデル学習および運用は主にデータセンターで行われるため、その消費電力への対応も今後の課題となっています。IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)は、世界のデータセンターの消費電力は2030年に向けて、年率15%で増加すると予想しています(図表7)。米国ではこうした電力需要の増加は、主に天然ガスや原子力によって賄われる見通しです。
昨年7月の日米関税交渉で、日本の関税引き下げと共に合意された5,500億ドルの対米投融資は、現在第2弾のプロジェクトまで発表されています。現在決まっている6つのプロジェクト、合計1,090億ドルのうち、3つが天然ガス発電、1つが小型原子炉で、金額は1,063億ドルとほとんどを占めます。米国は日本の対米投資も活用しながら電力需要の増加に対応する構えです。一方日本では、成長戦略として戦略17分野への累計370兆円超の官民投資計画が公表されましたが、そのうちAI・半導体分野は101.6兆円、データセンターを含むデジタル・サイバーセキュリティ分野は55.4兆円と大半を占めています。日本は米国のように自国で安価な天然ガスが手に入るわけではないため、原子力含めどのように電力を確保するかは今後の大きな課題になると考えられます。






